ジチタイワークス

【矢嶋 直美さん】広がる人との縁が私の人生のエネルギー。

『サード・プレイス』、それは家庭(第1の場)でも職場(第2の場)でもない、リラックスできる心地の良い場所。

本企画では、公務員の肩書を出しながらサードプレイスで活動している人にフォーカス。活動を始めたきっかけや、活動しているからこそ得られたこと、今後の展望など。公務員にとってのサード・プレイスがより身近になるきっかけを語っていただく。

矢嶋 直美(やじま なおみ)さん

プロフィール
平日は埼玉県庁職員として働き、土日はサード・プレイスを楽しむ二児の母。 

【主な活動】
・WEBマガジン「まんなかタイムス」で公務員インタビュー記事を連載
・鍼灸師の知人とお灸講座やカラダの仕組みを学ぶコミュニティ「カラダ部」の企画・運営
・公務員の新しい働き方や管理職のあり方を学ぶ勉強会の企画・運営
・性被害の当事者による演劇活動「DAYA

自分らしくいるために始めた新たな活動。

人って、 いろんな顔があって多面的ですよね。その多面性を十分発揮できて、楽しく過ごせる毎日を積み重ねいくことで、自分の人生を生きていることを実感できるのではないでしょうか。

それを家庭と職場で十分に発揮できていれば、もう一つの居場所って、いらないのかもしれません。

でも、私は家庭では「母」の役割、仕事では「公務員」の役割を果たすだけになりがちで、自分の多面性や自分らしさを十分に発揮できず、息苦しくなってきます。

家族や友人と旅に出たり、スポーツ観戦をしたり、習い事をしたりするなどいろんな形で、人生を謳歌している公務員の方もたくさんいらっしゃると思います。

私にとって、自分らしく生きていると実感するのは、自分の関心のあるテーマで人とコミュニティを築き、心の響くやりとりをすること。それが私のサード・プレイスになります。

具体的には、WEBマガジンで、公務員インタビューの記事を毎月連載しています。4年間で延べ40人の公務員に サード・プレイスや管理職に関するテーマで取材してきました。

また、地域で、鍼灸師の知人とセルフケアとして自宅でできるお灸やカラダの仕組みを学ぶ講座を開催したり、公務員の新しい働き方や管理職のあり方を学ぶ勉強会を主宰したり、性被害の当事者による演劇活動などをしています。

今は主に「ジェンダー」「公務員」「カラダ」というキーワードで、コミュニティを立ち上げ、その企画・運営をしています。そこでの人との出会いが、人生の彩りそのものだと感じています。

職場・保育園・自宅のトライアングルで悶々とする日々。

私は子どもが生まれる前からサード・プレイスという居場所での出逢いや企画・運営を楽しんでいました。

しかし、子どもが生まれると、職場・保育園・自宅のトライアングルを毎日こまねずみのように往復するだけの繰り返しの毎日……。

母としての役割と、公務員としての役割のみの自分は、とても息苦しくてつまらない毎日に感じていました。

今であれば、オンライン参加が可能ですが、当時はリアル参加のみ。私にはそんな時間が全く捻出できませんでした。

そのため、サード・プレイス時代の友人から誘いのチラシが届くたび、ため息をついていました。

そんなときは、独身時代からの知り合いである地元のコミュニティカフェの店主に、愚痴を聞いてもらい、「いつかできるようになるから、今は焦らなくていいのよ」と、子育ての先輩でもある彼女に慰められていました。

学童をきっかけにサード・プレイス再デビュー。

職場と保育園と自宅のトライアングルを駆け巡るこまねずみ生活を10年ほど続けていると、子どもは小学生になっていました。

“小1の壁”という共働き家庭が抱える悩みの種は、わが家の場合、近所の学童にお世話になることで解決しました。

その学童は、指導員の採用や新入所保護者への募集や説明、会費の徴収など学童の運営を保護者が行っています。“子どもにとって良い場所にしよう”とする、熱意のある保護者たちの手でつくられていたことから、子どもたちにとって学校でも家庭でもない、まさに“居心地の良いサード・プレイス”でした。

おかげで、二人の子どもは小学校の6年間、多年齢がごちゃまぜで遊びまくって、小学生らしい毎日を過ごすことができました。

その学童で役員や会長の役割をするうちに、徐々に職場や家庭以外で活動する時間を捻出するためのコツが掴めてきました。

そして、あるとき学童が立ち退きすることが決まり、その引っ越しの陣頭指揮を果たす中で、仕事や子育てをしながらもサード・プレイスの活動をやっていくことができる自信がついてきたのです。

徐々に広がる人との縁とコミュニティの輪。

そうして、かつてのサード・プレイスの知り合いの活動に、徐々に顔を出すようになります。 10年ぶりの参加でしたが、みなさん快く迎えてくれました。

当時の知り合いは、10年という月日でさらなる活動の実績を積み上げていました。

最初こそ「参加者」として参加していたのですが、徐々に運営側のお手伝いをするように。そうすると「参加者」であるよりも、人との縁が濃く深くなって、新たな人と出会いのチャンスが広がりました。

また、学童運営の経験をいくつかの場所でお話しする機会をいただくようになり、そこでの出逢いがまた、新たなサード・プレイスの扉となりました。

そうして、地元の劇団の方に誘われて、まさかの女優デビューをしちゃいました。また、冒頭で紹介したWEBマガジンでの記事連載や知人の鍼灸師とのカラダのコミュニティも、このような縁から始まっています。

公務員の新しい働き方を学ぶ勉強会の内容

公務員とのつながりは、「オンライン市役所」や「地方公務員オンラインサロンHOLG」を通じてできました。

これまで、公務員コミュニティには縁がなかったので、恐る恐る参加しましたが、この2つのコミュニティのおかげで、全国の公務員の方と出逢うことができました。

その縁もあって、「公務員の新しい働き方」と「公務員管理職のあり方」というテーマで、2つのコミュニティを立ち上げることになりました。

Facebookが活動の発信や企画・運営の強い味方に。

そして、 そんなご縁つなぎに欠かせないのがFacebookです。サード・プレイスに関する発信や企画・運営の強い味方になってくれます。

Facebookで、自分の興味・関心がある発信を続けていると、そこに興味をもってくれる知り合いが分かります。また、知り合いの興味や特技も分かるので、そのお力を発揮して、一緒に活動してもらえるよう誘うこともできます。

始めた頃は、日々の「日常や想い」の中で、何をどこまで発信するか悩みました。しかし、今では自然体で毎日の心模様や土日のサード・プレイスでの活動を発信するまでになっています。

もちろん、仕事や家庭で、心が荒んで発信する気持ちにならないときはお休みしています。でも、あえて荒んだ心をチラッと吐露して、みなさんに慰めてもらうこともあります。

肩書にとらわれない“無形資産”の築き方。

先ほど紹介したWEBマガジンでは、人生100年時代、貯蓄などの有形資産はもちろん、お金に換算できない、友人関係や知識、健康などの“無形資産”を今からコツコツと蓄えていきたいと考えました。

公務員の定年が65歳まで延長されたとはいえ、人生100年時代、公務員後の人生はまだまだ続きます。かつて私は、公務員定年後にどのような仕事をしていくべきか、悩んでいました。

そこで、公務員という生き方をしながら“無形資産”を蓄えながらサード・プレイスを楽しんでいる公務員21人にインタビューをすることに。そのタイトルが「教えて!『無形資産』の築きかた」です。

これは、リンダ・グラットン 、 アンドリュー・スコットの共著である『LIFE SHIFT - 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)で紹介されていた“無形資産”から使わせてもらいました。

お金などの有形資産ではなく、友人関係や知識、健康などの無形資産は、公務員の仕事でも築けます。しかし、サード・プレイスで築いた無形資産は、公務員という立場を離れてからもその価値は失われないものです。

公務員や元公務員の方のインタビューでは、それぞれの生き方や考え方を自分自身に当てはめながら、これからの生き方やキャリアについて向き合う機会になりました。

また、サード・プレイスの活動を通して、公務員という肩書ではなく個人としての人とのつながりが、何物にも代えがたい“無形資産”を築く機会となっています。

私にとってのサード・プレイスとは、公務員として働き続けるエネルギーを注いでくれる原動力でもあり、公務員後の人生を豊かにしてくれる資産づくりの場でもあります。人とつながることやその活動で培う経験は、まさに無形資産づくりの宝庫です。

みなさんは、「公務員」という肩書がなくなったとき、誰とどこで、どんな人生を過ごしていたいですか?

そして、まさに公務員である“今”、人生を楽しんでいますか?

 

ー 矢嶋さんのコミュニティの立ち上げ方 ー

①自分のやりたいことのコンセプトをまとめる。
②コンセプトに興味をもってくれそうな人を集めて説明する。
③そこでの意見を混ぜ合わせながら、コンセプトを再構築し、その人も巻き込んでいく。
④さらなる企画・運営は知人の特技を活かしてもらえるように誘う。
⑤イベントは告知期間を十分に設けて、定員になるまでしつこく広報する。 
⑥参加者同士が知り合い、つながる場にするため、10人程度でこじんまりと行う。
⑦主催者側のわたしもその時間を思いっきり楽しむ。
⑧はじめましての参加者とはその日のうちにFacebookでつながって、おもしろい活動をしていたら、ふらりと遊びに行ってみる。

→このような感じで続けていると、無理なく、楽しみながら、自分にとって居心地の良いコミュニティができてきます。そして、愉快に、緩く“サード・プレイス”を満喫することで、公務員として働き続けるエネルギーが湧き上がってくるのです。

 

サード・プレイス記事一覧
#1 【金治 諒子さん】ほんのちょっとの勇気から始まった、私のサードプレイス
#2 【荒井 怜央さん】サードプレイスでみつけた新たな彩り

#3 【朝里 樹さん】趣味だった怪異・妖怪の記録を続け現役公務員として作家デビューを果たす。 
#4 【矢嶋 直美さん】広がる人との縁が私の人生に彩りを与えてくれる。 ←今ココ
#5 【磯部 健太さん】サードプレイスは、自己実現をするための最高の場所。
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