出産・子育て応援事業で育児に使える商品券を給付し、村全体に子育て支援の機運を。

こども

読了まで：4分

子ども・子育てのための商品券

出産・子育て応援交付金の給付方法として、現金ではなく商品券を採用した東海村。そのねらいは、村内の地域事業者にも子育て支援の機運を生み出すことだったという。村を挙げた支援に向けて奔走する、現場担当者を取材した。

※下記はジチタイワークスVol.27（2023年8月発行）から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]株式会社トイカード

現金ではなく商品券のお届けで、村からの熱いエールを感じてほしい。

出産・子育て応援交付金は、令和4年10月末の閣議決定後、事業開始までの間に時間的猶予がなかったことから、現金給付となった自治体が多い。一方、村長の意向は“現金以外での給付”と明快だったという。「貯蓄や用途外の使用にまわることなく、確実に子どものために使ってほしいという願いからの決定です。そこで、急ピッチで情報収集に着手しました」と担当課長の千葉さんは振り返る。

同村では、国からの交付金に村独自の施策として5万円を上乗せ。総額15万円分と高額になるが、「利用者目線で、使い勝手の良いものにしたいと考えました。地域のプレミアム商品券やカタログギフト、キャッシュレスサービスなども検討する中、出合ったのが『こども商品券』です」。

発行元の「トイカード」に問い合わせたのは12月のこと。説明を受け、すぐに検討に入った。「子どもに関する商品やサービスに特化した商品券として、自治体での導入実績も多くありました。最も魅力的だったのは、加盟店の追加登録が容易だったこと。村内に登録店舗を増やせば、地域事業者にも子育て支援の機運を醸成できると考えました。地域活性化にも貢献できます」。これに村長も快諾し、「東海村出産・子育て応援ギフト」として、同商品券の採用が決定した。

加盟店拡大で子育てサービスを創出し、村内消費につなげる。

全国で使える商品券だが、当初、村内で利用できるのは大手の店舗のみで、課題は加盟店の開拓にあった。地域事業者に登録を促そうと、商工会に協力を求め、トイカード担当者も同席して説明会を開催。事業の周知を図った。「母子保健担当課とも連携して子育て世帯に喜ばれるサービスを話し合い、事業者のもとに出向いて説明に努めました」。

当初は“こども”という名称から、自分たちは無関係だと考える事業者も多かったというが、「そこはアイデア次第。例えば和菓子屋さんは子育てに関係がないように思われますが、1歳のお祝いに子どもに背負わせる一升餅を商品券で購入できるように、と提案。母乳マッサージや育児相談ができる助産院や、一時預かりができる保育施設、整体院などにも加盟を勧めました。産後のお母さんをケアするサービスも大切ですから」。

取り組みが功を奏し、村内の加盟店は現在19件※。多様な商品やサービスが選べるようになり、商品券の村内消費も期待できそうだ。今後も随時、加盟促進を図っていくという。

※令和5年6月時点

コミュニケーションで輪を広げ、様々な事業者が子育て応援団に。

ギフトを申請した住民からは、“物入りなので助かる”“子育てを応援してくれていると感じる”との声があり、事業者に直接、“商品券を使えますか？”という問い合わせもあるそうだ。それを受けて登録申請を行った事業者もあり、村は利用者の声や口コミからも加盟店が増えることに期待を寄せる。

「商品券の発送業務は自治体が担うため、デジタル商材と比べると手間はかかります。一方で事業者にとっては、特別な機器が不要で加盟しやすいのです。登録から管理、利用者対応、精算などはトイカードが一括して行ってくれるので助かります」。今後、同商品券はデジタル版も開発される予定で、同村も事業者のキャッシュレス対応状況を見ながら検討することにしている。

地域を巻き込んで協力者を増やすことも、行政の重要な役割だと話す千葉さん。商品券をきっかけに生まれたコミュニケーションで支援の輪を広げ、子育て世帯の安心感につなげる。「事業を通して、地域事業者にも“子育て支援に力を入れていこう”という動機付けができたと思います。子育て世帯にとっても、応援してくれていると実感できることや、村での経験が家族の思い出になるのは、うれしいことでしょう。そしてそれが、村への愛着につながってくれれば」と結んでくれた。