被災地の迅速な復旧・復興をICTでサポート
大地震の発生や台風災害、ゲリラ豪雨など、想定を超えた災害が多発する近年。全国の自治体では、各種の防災対策やICTを活用した対策整備を急いでいる。そうしたニーズを受けてNTT東日本は、豪雨時に河川氾濫予測などから避難指示等発令の意思決定を支援するシステムや、迅速かつ正確な災害関連情報を一斉配信・即時集計するシステムなどを提供。加えて、ドローンを使った被災現場調査の取り組みなども検討中だという。NTTのグループ力を駆使し、平常時から警戒期、発災から復旧期まで、各段階に合わせた防災および復興ソリューションを提供している同社だが、中でも導入自治体が急増しているのが「被災者生活再建支援システム」だ。このシステムを運用し、台風19号での被災時に活用した茨城県の取り組みを取材した。
※下記はジチタイワークスVol.10(2020年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供]NTT東日本
熊本地震発生時の職員派遣でマンパワー頼みの限界を痛感。
災害によって「住家」が被害を受けた場合、多くの自治体は現在も、職員が被災現場で紙の調査票に被害状況を記入する調査業務や庁舎に戻ってのデータ入力作業、被災者の住民情報や家屋情報の確認作業を行うなど、“マンパワー”に頼ったアナログな手法をとり続けている。これでは、被災者を待たせることとなり、復興が遅れ、それをカバーするため、さらに職員の業務負担が増大するという悪循環に陥ってしまう。
「当県でも平成27年の関東・東北豪雨の際、り災証明書の発行に時間がかかり、マンパワー頼みの対応に限界を感じる声が上がっていました。その後、翌年に起きた熊本地震が契機となって、ICTツール導入による“被災した際の備え”を本格的に検討するようになったのです」と茨城県の大関さんは語る。
熊本地震発生時、同県も現地支援のための職員を派遣したが、「職員から聞こえてきたのは“災害対応には十分な備えが必要だ”という声でした」。
東京都など被災地派遣の経験が豊富な職員は、ICTツールを準備し、指示を待つのではなく、率先して情報を収集・提供したり、効果的な対応策を提案したりしていたという。
県全体での導入が重要と感じ市町村への説明会を実施。
その経験をもとに、国立防災科学技術研究所のセミナー等で情報を収集。そこで同研究所の林理事長から説明を受けたのがNTT東日本の「被災者生活再建支援システム」だった。「建物被害調査からり災証明書発行までの行程をシステム化すれば、発行手続きを迅速に進められるはずです。しかし、システム導入から運用までを市町村ごとに進めると、手続きにバラツキが生じ、発行のタイミングなどに差が生じるおそれがあると考えました。そこで、市町村間に差が生じないよう、県主導でシステムを整備し、市町村をけん引するべきだと考えました」。
平成29年7月から各市町村へシステム導入に関する説明会を開始したほか、システム利用のデモンストレーションなどを実施。「大規模災害時に各市町村だけで対応するのは大変ですが、県下で同一システムを運用すれば、広域での被災時や、近隣の市町村が被災したときの応援や受援がスムーズになります。そのためにも、発災してからでは遅いこと、県が主導することで市町村への負担金が抑えられることなどを丁寧に説明しました。その結果、最終的には、43自治体から賛同を得ることができました」。
システム操作説明会の様子
台風被害でシステム導入の必要性と効果がより明らかに。
システム構築後、令和元年度から運用を開始した同県は、その約半年後に大型の台風19号による浸水被害に見舞われた。運用開始から期間は短かったものの、システム活用による効果は明白だったという。「特に、NTT東日本さんの協力でタブレットやスマートフォンなどのモバイル端末で建物被害調査を実施できたことは大きかったですね。従来は紙の調査票に被害状況を記入していたため、雨が降ると調査を進めることが難しかったのですが、モバイル端末は調査を続行できました。また、被災者からの申請後に現地調査を実施するのではなく、調査対象地区を事前にリストアップし、先行して調査を一気に行ったことにより、り災証明書発行までの時間を短縮できました」。
調査件数は1日最高750件に上り、被災した5市町の主な調査をわずか2週間ほどで完了。「台風通過の1カ月後、申請件数に対するり災証明書発行件数が1割弱しか進んでいない県もある中、当県では8割を超えていました。この差が、システム導入という“備え”による成果だと考えています」。
同県は今後、職員向けのシステム研修やモバイル端末の自前調達などを進め、“災害に負けない自治体づくり”をより強力に推進する計画だ。
Interview
茨城県 防災・危機管理部 防災・危機管理課
大関 裕之さん
被災地の迅速な復興における課題解決を支えるシステム。
「被災者生活再建支援システム」の概要
被災者生活再建支援システムの強みとは
1.自治体からの信頼の厚さを示す他に類を見ない導入実績の高さ
令和元年度末までに、全国で計214自治体が導入。導入済みの自治体で地震や風水害が発生した際も被災地に入って支援しており、令和元年東日本台風(台風19号)では、東日本の26自治体が同システムを活用した。
2.知見を活かしてバージョンアップ自治体ごとのニーズや法改正にも対応
被災した自治体における運用状況などを確認し、システムの改善点が発見された場合や自治体側からの要望があった場合は、随時バージョンアップを実施。内閣府による災害および被害認定関連指針の改訂・改正にも、バージョンアップを通じて対応している。
3.Bizひかりクラウド版ならLGWAN経由で利用可能!
Bizひかりクラウド版では、安全性・安定性に定評のあるNTT東日本のクラウド基盤を活用しており、発災直後から安心して運用が可能。また、LGWAN(総合行政ネットワーク)経由でシステムが提供されるので、自治体における導入が容易で情報セキュリティ面の信頼性も高い。
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