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【しくじり談#02】一人で抱えすぎた結果まわりに迷惑を……私は業務の進め方でつまずいた。

誰にとっても失敗は怖いもの。「できることならチャレンジせず、現状維持でいきたい」と考える人は、決して珍しくないだろう。本特集では、現役の自治体職員が経験した“しくじり”と、そこから得た気づきをご紹介。

「真面目」と言われることが多い自治体職員。しかし、その生真面目さが責任感を一層強くし、「人に頼ることで迷惑をかけてはいけない」「自分でやらなければならない」と、一人で抱え込んでしまう原因にも……。今回は、そんな“背負い込みタイプ”の職員さんにインタビュー。キャパオーバーの末に一体何が起こったのか、その困難をどう乗り越えていったのか、赤裸々に語ってもらった。

※掲載情報は公開日時点のものです

まわりに迷惑をかけたくない気持ちが裏目に。

――落合さんは、どんな“しくじり”を経験されたのですか?

これは本当につい最近……2年ほど前の話なのですが、まちの総合計画の担当をしていたときにやらかしてしまったんです。

ひとことで言うと、なんでもかんでも自分で抱え込みすぎて、結果的にまわりの職員に迷惑をかけてしまった、ということです。総合計画はまち全体の計画なので、作成する担当者や所属課だけではなく、各課を巻き込んで、住民の話も聞き、様々な要素を盛り込んで整理してつくりあげていくものですが、その進め方がまずかったんですね。

――自分一人でも何とかなる、と思い込んでいた?

そうです。そして抱え込んだ結果、当初のスケジュールから大幅に遅れてしまい、同僚や後輩、上司を巻き込んで手分けしてやることになった。しまいには役場全体に影響が及んだので、そこで「すみません」と頭を下げた…という流れです。

私が甘く考えていたのが間違いなのですが、うちの役場は職員が100名くらいなので、1人が複数の業務を兼務しているんです。私も同様ですが、そうした事情もあって他の職員にはお願いしづらい、という感覚もありました。

ちなみに、この業務は現在進行形です。そういう意味では、まだどうにかなる段階で話をできたのは救いだったと思っています。

リーダーシップと決めつけは違う。

――総合計画を1人でつくるのは、かなり難しいことのように思えますが……。

もちろん、全部を1人でやろうとしていた訳ではありません。自分の課が取りまとめ役の担当課ですが、他の各課から職員を集めて“担当者会議”もやっていました。そこで相談や協議を行っていたのですが、その進め方にも問題があったんです。

例えば、スケジュールを作成するときに、自分でつくってから「これでどうですか」と提示する感じでした。メンバーの意見や気持ちは反映されていないんです。

――確かに、先手を打たれたら自分の意見は出しにくくなりますね。

どうしたらみんなが話しやすくなるのか、どうすればいい意見が出てくるのか、といったことも考えていたのですが、あれこれ考えすぎて空まわりしてしまった感があります。

それに、言い訳っぽくなりますが、当時はじっくり考えている余裕がなくて……、動きながら考えてアジャイル的にやっていけばいいと考えていたんです。

でも、総合計画の完成に向けたストーリーをしっかりつくっておかなければ、目標にはたどり着けません。そのストーリーづくりというか戦略が甘かったな、と今になって思います。

講座で得た“巻き込み力”という気づき。

――その経験からご自身の中で何か変わりましたか?

色々変わりました。というより、まず自分を変えなくてはと思って、元日南市長の﨑田さんが講師を務める「プロフェッショナル公務員養成塾」に参加したんです。

ここでは多くの気づきがありましたが、一番印象に残ったのは“巻き込む力が大切”ということ。すごく影響を受けたし、もっと早く聞いておけばよかった。今も、業務の中で考えながら実践しています。

あと、コミュニケーションを重視するようになりました。特に、日常のあいさつは欠かさないように心がけています。小学校の頃の自分に負けないように、元気よく。世間話も同様ですね。職場の風通しがよくなるよう、自分から能動的に動いていかなければ、と意識しています。

大切なことは何度でも伝えた方がいい。

――総合計画は2年前の話ということでしたが、そのほかの“しくじり”はありますか?

15年くらい前ですが、徴税の担当をしていたときがあったんです。当時、その部署では“税金は納めていただくもの”というより、“納税は義務、納めて当たり前”だとたたき込まれていた。その考えをもとに、いけいけドンドンでやっていました。

差し押さえも容赦なく実行して「明日からの生活をどうしてくれるんだ」みたいなことも言われました。今思えば、あまりにも一方的で……、もっと考える余地があったなと思います。私自身、当時は眠れない夜もありましたし。

――そうした経験や反省を、後輩に共有する機会はありますか。

公式に共有するような場はないので、例えば同じ課の後輩に、雑談まじりで「実はこんなことがあったんだよ」と話をすることはあります。

悲惨な感じにならないよう気を付けながら、分かりやすく、面白おかしく伝えるんです。行政の仕事への興味を深めてもらうためにも、そうした情報は必要かなと。

昔は「1度言ったら2度は言わない」という世界でしたが、それは違う。人間誰だって忘れます。民間では社長がビジョンを何度も語るように、大切なことは何度も伝えないといけない。今は心からそう思います。

変革はよい職場環境から生まれる。

――「失敗したくない」という職員に向けてメッセージを!

若い世代の方々はみんなすごく真面目で、しっかりしています。でもその反面、“失敗してはいけない”という気持ちも強い印象です。それはそれで間違っていませんし、行政の原資は税なので、失敗によってムダ遣いしてはいけないと考えるのも当然です。

ただ、そればかりだと変革は起きません。地域をよくする、仕事を楽しくするといったことを実現するにはチャレンジ意識が必要になります。今はKPIとかPDCAとか色々言われますが、そのフレームに捉われすぎるのではなく、時には現状を突き破るような発想を持っていてもらいたいです。

私自身、たくさんのつまずきを経験してきましたが、結局なんとかなっている。上司や同僚、後輩、あるいは住民の人たちが助けてくれたりもします。まわりにそういう人たちがいることがうれしいし、そう思うだけで仕事への心構えも変わってくる。何でも相談し合えて、助け合える職場が、一番いい環境だと思います。
 

 

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