放送を使って自治体が防災・行政情報を配信するシステムを構成する機材を開発した、エレコムのグループ会社・DXアンテナ(兵庫県神戸市)。東京営業部マルチキャスト推進室課長代理(室長)の辻真一さんに、仕組みと活用方法を伺いました。
※下記はジチタイワークス Vol.5(2019年4月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供] DXアンテナ株式会社
特殊技術を使って放送から情報伝達
平成29(2017)年9月、DXアンテナは兵庫県加古川市において「V-Lowマルチメディア放送」を使って災害情報を伝達する消防庁の実証事業に参加。そして今年3月、同技術を利用した屋外拡声装置やモーターサイレン制御ボックス、V-Low鍵ボックスなどを同市に納入しました。
システムの最大の特徴は、放送を利用して情報を配信している点です。「IPDC※という技術を使い、放送にIPデータを乗せて送っています」とDXアンテナの辻さん。DXアンテナは早くからこのIPDC技術に着目し、自治体の問題解決につながる「DXマルチキャスト®」シリーズの製品開発に取り組んできました。得意とするCATVでの応用にも取り組みながら、IPDC技術が採用されている「V-Lowマルチメディア放送」(ジャパンマルチメディア放送グループ提供)へも展開しています。
屋外拡声器(加古川市)
既存のリソースを活用産学官連携で生まれたシステム
DXアンテナは、V-Low放送が届くエリアでは「V-Lowマルチメディア放送」、それ以外のエリアではCATVと、自治体に合わせたソリューションを提案します。例えば、加古川市では、市庁舎が被災しても情報発信できる強靭なシステムを構築したいという意向があり、V-Low放送を使った情報伝達システムを導入しました。神戸市外国語大学の芝勝徳教授と、大阪マルチメディア放送ほか複数の協力のもと開発された「V-Low鍵ボックス」もその一つです。
また、高齢化と過疎化対策が課題だった奈良県御杖村では、CATV網を活用して、全800戸に専用端末を導入し、緊急情報のプッシュ型配信を実現しています。「自治体によって現状や課題は異なるが、活用できる資源も少なくない。既存の設備を最大限に活用できる災害対策を、各自治体に合わせてご提案できれば」と辻さん。現在は全国の自治体に足を運び直接ニーズを伺い、財政支援の相談にも乗っています。
自然災害が相次ぎ、速やかで安全な避難ルート確保や二次災害の予防、そしてより確実な情報伝達システムの普及が急務とされています。既存の資源を活用したこの情報配信技術は、さらに注目を集めそうです。
避難所や倉庫に設置する「V-Low鍵ボックス」。避難所開設の放送を受信するとキーボックスが解錠する。
※IPDC:IP Data Castの略で、従来のインターネットをはじめとする通信パケット(IPデータグラム)を放送に乗せて一斉配信する伝送技術の総称。
※「DXマルチキャスト」は当社の登録商標です。
「DXマルチキャスト®」の製品群が話題のV-Lowマルチメディア放送でも大活躍
テレビ放送の特徴
一般的に、通信は「送る」と「受ける」の1対1が基本だが、テレビ放送では1対nに向けた配信が可能で、輻輳(混雑すること)がなく災害に強い。つまり、電波が入る場所であれば、あまねく広く、すべての人に同時に情報を伝達することが可能です。
Case1 兵庫県加古川市
課題
◯市庁舎が被災しても情報発信できる強靭なシステムを構築したい
◯速やかに避難ルートを確保したい
伝送路/伝送の種類
既存放送(マルチメディア放送会社)/無線
メリット
◯耐災害性の高い放送局の設備を利用できる
◯放送で「鍵ボックス」を解錠できる
システムラインナップ
◯屋外拡声装置
◯モーターサイレン制御ボックス
◯V-Low鍵ボックス
Case2 奈良県御杖村
課題
◯電波が届きにくい山間部にも効率的に情報を届け、全戸受信を確立したい
◯屋外拡声の音声が聞き取りづらい状況下でも緊急情報を届けたい
◯平常時の情報伝達も確実にしたい
伝送路/伝送の種類
既存放送(CATV会社)/有線
メリット
◯テレビに大きく文字や画像を表示
◯既存のCATVのインフラを利用できる
◯テレビ視聴の契約があれば利用可能
システムラインナップ
◯DXメディアゲートウェイ(戸別受信機)
◯送信サーバー
お問い合わせ
サービス提供元企業:DXアンテナ株式会社
TEL:03-6631-1442
住所:〒102-0073 東京都千代田区九段北4-1-28 九段ファーストプレイス3階
【本社】〒651-2241 兵庫県神戸市西区室谷1-2-2
担当:東京営業部マルチキャスト推進室