安定だけで大丈夫？公務員が今から始める資産形成のススメ

自治体で働く
“コトとヒト”を元気に。

事例のみ

解説するのはこの方
林誠（はやしまこと）さん
埼玉県所沢市産業経済部長
1990年に所沢市入庁。総務部では議会対応、財務部では予算編成などを担当した後、埼玉県地方分権推進室へ出向。2002年から財政部門、商業振興部門、政策企画部門等に所属し、現職。中小企業診断士、通訳案内士。

著書に「お役所の潰れない会計学」(自由国民社)、「財政課のシゴト」(ぎょうせい)、「イチから分かる！“議会答弁書”作成のコツ」(ぎょうせい)、「９割の公務員が知らないお金の貯め方・増やし方」(学陽書房)、「公務員の読み書きそろばん」(学陽書房)など。

昔と何が違う？資産形成が必要とされる理由。

令和6年は、“投資”が盛り上がった一年でした。

きっかけの一つは、同年1月から始まった“新NISA”。日経MJ（日経流通新聞）の「ヒット商品番付」で西の横綱に位置付けられるほどに広がりました。また、日経平均株価がバブル期を上まわる最高値を付け、4万円の壁を突破したことも大きな話題となりました。

公務員の中でも、投資や資産形成に関する意識がかつてないほどに高まってきているように感じます。その一方、こんな声も聞こえてきます。

「いや、投資とか資産形成とかいうけど、先輩たちはそんなことやってなかったよ」「そもそも公務員が投資とかする必要あるのかな……」、そう言いたくなる気持ちは分かります。一時の流行のようなものに乗せられたくないという思いをもつのも当然でしょう。

しかし、時代は変わりました。われわれが暮らす今と、ほとんどの人が資産形成に関心がなかった頃との大きな違いは、以下の3つです。

1. 人生100年時代の到来
長生きは素晴らしいことですが、そのためには備えが必要です。例えば、65歳まで働くとしても100歳まであと35年あります。親の介護について考えなければならない人も少なくないでしょう。

2. 公務員の優遇制度の終焉
かつては、退職金や年金制度の面で、公務員には優遇措置がありました。ですが今は、民間企業とそろえられています。公務員が恵まれている面は依然としてありますが、「公務員だから大丈夫」という理屈は通用しなくなったのです。

3. デフレからインフレへ
長く続いたデフレの時代は、金利が付かない代わりに銀行に預金を寝かせておいても価値が目減りすることはありませんでした。インフレになると、預金しているだけではどんどんお金の価値が下がっていくことになります。

こうして整理してみると、生涯を通じてお金のことを考えなければならない時代になったのだなと改めて感じます。それを、「面倒」「大変」ととらえる人もいるでしょうが、お金について考えるのは本来当然のことだと思います。

さらに、新NISAやiDeCoといった制度は、国を挙げて個人での資産形成を促しているといえそうです。自分のことは自分でお願いします、というわけです。

ただ、お金のことばかりを考えて、ずっとあくせく暮らし続けるのは寂しいものです。お金について知ること、そして“資産形成を自分事にする”ことは、むしろお金から自由になるためのものと考えたいところです。

公務員だからこその資産形成のメリット。

時代が変わり、公務員も資産形成に真正面から向き合う必要性が高まったことはご理解いただけたでしょうか。

しかし、公務員には公務員なりの強みもあります。それを理解しておくことも資産形成を進める上では大切なポイントです。なんといっても“雇用の安定”は、公務員の大きな強みです。突然解雇されることはありませんし、税収が減ったからといって、いきなり給与やボーナスの額が大きく下がることもありません。

また、自治体職員であれば、長距離の転勤はあまり考えられません。ライフプランが立てやすく、住宅ローンなど高額の借り入れでも審査が通りやすいはずです。さらに、共済組合による各種保険制度が適用されるため、医療費の自己負担額が少なく済むのも利点です。

公務員だからと安閑としてはいられませんが、公務員ならではの強みもありますので、こちらはしっかり活かしていきたいところです。