ジチタイワークス

福井県

ふるさと納税の未来は自分達で切り開く!70の地方自治体からなる連合の取り組み

今や3600億円を超える規模に拡大したふるさと納税。しかし活況の下で返礼品競争が過熱し、国が法改正を行い規制する事態となった。そんな中、自治体の力で制度本来の趣旨を伝え、真摯に地域おこしをしようとする団体がある。「ふるさと納税の健全な発展を目指す自治体連合」(※以下、ふるさと自治連)だ。ふるさと自治連が事務局を置く福井県地域交流推進課・課長の藤丸伸和さんに話を聞いた。

※下記はジチタイワークスジチタイワークスふるさと納税特別号(2019年7月発刊)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[提供] ふるさと自治連

ふるさと納税の提唱県が連合を設立

ふるさと自治連設立の呼びかけを行ったのは、ふるさと納税制度の提唱県である福井県だ。同県の前知事・西川一誠氏が平成18(2006)年、「ふるさと寄附控除導入を」という論説を日経新聞に寄稿。これに対して各界から大きな反応が起こり、「ふるさと納税研究会」が設置され、わずか1年半で制度創設に至った。

福井県がふるさと納税を提唱したきっかけは、日本における地方と都市の関係性、つまり「ヒト・モノ・カネ」が大都市へ流出する国土構造になっているという点にイノベーションを起こせないか、と考えたことにあった。地方で行政コストをかけ育てた子どもたちが、大人になると大都市に出てそこで住民税を納めるというアンバランスの解決策だ。「ライフサイクル・バランス税制」としての発想で、故郷や地方に対する想いがあれば、誰でも寄附や応援ができ、自然な形で税を都市から地方へ還流させようというのがふるさと納税の理念だった。

しかし、ここ数年は返礼品にばかり注目が集まり、前述の趣旨や理念が十分に理解されないまま制度の是非が問われるようになった。こうした状況を受け、ふるさと納税創設時の理念に立ち返りさらなる発展を目指そうという意図で、平成2 9(2017)年に誕生したのが、ふるさと自治連だ。

ふるさと自治連の活動内容とは

設立から2年が経過し、ふるさと自治連は活動の幅を広げている。その内容は主に以下のようなものだ。【「ふるさと納税の未来を考えるシンポジウム」の開催、「ふるさと応援メッセージ」全国コンクールの実施、ふるさと納税活用事例集の発行、優良事例の自治体表彰、担当課長会議や総務省との意見交換】

さらに、平成30(2018)年には啓発強化のための「ふるさと納税月間」(8月・11月)をスタート。制度の利用促進や、理念の啓発を進める中で賛同者も増え、知名度を高めている。

ふるさと納税の未来へ向けた取り組み

新規制が発効した時点でふるさと自治連に参加していたのは約70の自治体。新たなルールのもと、総務大臣の指定を受けた自治体のみの参加とする会則改正を行ったため、参加自治体は今後増えていく可能性が高い。組織が拡大していく中で、どういったことに取り組んでいくのか、藤丸さんは活動の主軸として以下の3つを挙げる。

1.啓発活動の全国展開
2.人の移動につなげる
3.都市自治体との連携強化

「1については、『ふるさと納税月間』を始めとする啓発活動をさらに広げます。2では、返礼品をめぐるネットショッピングのような感覚を是正し、都市部の人々が地方に目を向け、さらに足を運んでもらうことで地域活性化につなげる取り組みを強化します。そして3で、ふるさと納税は都市と地方の課題解決のためにあるという理念のもと、両者の相互理解・連携を生む施策を模索したいと考えています」(藤丸さん)。こういった活動を促進するためにも、さらに仲間を増やしたいと藤丸さんは意気込む。参加数が増えることは寄附者の信頼感にもつながるため、各自治体が受けメリットも大きいはずだ。

今年度の事業計画には、返礼品だけでなく返礼の“コト”を充実させ、より地域のことを知ってもらう目的で「ふるさとの魅力体感プロジェクト」を盛り込み、着地型ツアーや地域住民との交流体験なども仕掛けていくという。新規制のもと、ふるさと自治連の活動はどのように実を結ぶのか、今後の活動にも注目していきたい。

ライフサイクル・バランス税制とは

地方で行政サービス(子育て・教育・医療etc.)を受けて育った人材が、大都市に就職してそこで納税するという税収格差のアンバランスを解消する手段

ある地方自治体の場合

出生から高校卒業までをサポート→自治体の行政サービスは1人あたり約1800万円
大学進学などで大都市へ、そのまま就職→転出先の自治体への納税総額は1人あたり約1000万円

毎年2000人が転出すると…(1800万円×2000人)+(1000万円×2000人)=毎年560億円の損失

東京都の場合

毎年6万人が転入すると…(1800万円×60000人)+(1000万円×60000人)=毎年1兆6800億円のボーナス

こういった都市と地方の税収格差を是正するとともに、ふるさとを思う人の心を活かすための仕組みが「ふるさと納税」である。

Results

地方自治体が団結し、共通認識を持つことで、ふるさと納税の課題を内部から是正。互いに学び合うことでふるさと納税の新たな可能性を広げ、制度の健全発展を目指す。

「ふるさと納税の主体はあくまでも地方自治体。その中で志を持ち、共に学びながら協力して活動できる場がふるさと自治連です。参加ではなく“賛同”というかたちで、趣旨や理念の共有から始めることもできます。一緒に盛り上げていきましょう!」(藤丸さん)

 

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