
携帯電話回線で使えるAI音声文字起こしツール
議事録作成を効率化すべく、ツールを導入する自治体が増えている。しかし、新たなツールを全庁に浸透させるのは容易ではない。藤井寺市は、使いやすいツールに切り替えることで、庁内活用を推進したという。
※下記はジチタイワークスVol.38(2025年6月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。
[PR]株式会社時空テクノロジーズ
政策企画部
政策推進室 DX推進課
チーフ 山田 智寛(やまだ ともひろ)さん
庁内でのツール活用が進まずに、別の手段を模索して切り替えを検討。
議事録作成は、全国の自治体で欠かせない業務の一つだ。しかし、録音を聞き直しながらの文字起こし作業は職員の時間的負担が大きく、他業務を圧迫してしまう。そのため、ツールを導入し、効率化を図る自治体が増えているが、中には導入しても活用が浸透しないケースもあるのだという。
同市では、以前より音声文字起こしツールを導入し、庁内での展開を図っていた。会議室へICレコーダーを持ち込み、録音した音源をツールに読み込ませるタイプだったという。ただ、その利便性が発揮されることは少なかったと当時を振り返る山田さん。「文字起こしの精度に課題があり、職員間でなかなか活用が進まなかったのです。結局、手作業から脱却できず、業務量が減らない状況でした。それを何とかしたいという思いで別の手段を探していました」。
そんな折、参加していたDX勉強会で知ったのが、「時空テクノロジーズ」が提供するAI音声文字起こしツール「ログミーツ」だった。無料トライアルの募集を知って同社へ問い合わせ、令和5年から試用を開始。その後、約半年間をかけて使用感を確認し、翌年には本導入を決定したそうだ。
トライアル時の庁内アンケートでは、90%以上が継続したいという回答に。
同ツールは、マイクが内蔵された専用モバイル端末のボタンを押すだけで、録音と文字起こしができるもの。端末は、スマホよりも小さいサイズ感で、手軽に持ち運びが可能だという。また、音声と文字起こしされたテキストは、クラウド上にリアルタイムでアップロードされる。WEBブラウザから専用編集画面にログインすると、テキストの編集や音声の聞き直しが可能で、議事録の調整や修正も簡単にできるそうだ。
さらに、端末にはSIMが搭載され携帯電話回線を利用するため、LAN設備やWi-Fi環境の有無にかかわらず、外出先などでも活用できる。「ちょうど定例議会の時期にトライアルを開始したので、議場のマイクに接続して、庁内向けにデモンストレーションを実施しました。職員には、文字起こし精度の高さや編集機能などが好評で、“これなら使えそうだ”という反応が多かったですね」。
導入時の予算査定にあたっては、以前のツールの浸透が難しかっただけに、他社ツールとの比較検討も含め費用対効果の検証をシビアに見られた。その点に対しては、トライアル時に集計した庁内アンケート結果を用いて、時間削減効果や職員からのニーズの高さを示したのだという。「試用した職員の約85%が事務負担の軽減を実感し、作業時間が10~30%ほど削減できたという結果でした。また、約90%が今後も継続して使いたいという回答で、職員からの需要もうかがえたのです。ほかにも、専用端末の持ち運びやすさと操作の簡単さ、比較的安価な料金設定が決め手となりました」。また、端末には録音データが残らない仕様のため、紛失した場合など、万が一のリスクに備えられる。自治体が懸念するセキュリティ面にも安心感があったそうだ。
活用促進に向けた工夫が、スムーズな横展開につながる。
令和6年から正式に専用端末を2台導入し、ほぼ毎日、使用予約が入っている状況だという。活用が進んだ背景には、DX推進課の努力があった点も見逃せない。「録音環境が文字の変換精度に影響するため、同社には専用端末と同時にマイクも借り、試行錯誤を繰り返しました。会議室の広さや参加人数に応じた適切なマイクの数と配置方法の写真を撮り、ツールを使用する職員に効果的な使い方を共有。実際の文字起こし精度を実感してもらうことで、より多くの職員に浸透するように工夫しました」。
そうした取り組みの成果として、庁内40課のうち30課以上がツールを活用するようになった。操作がボタン一つで済むという利便性もあり、世代を問わず受け入れられたそうだ。また、以前のツールとの違いとして、気軽な活用も進んでいる。議事録作成の必要がない小規模な会議やベンダーとの打ち合わせ、WEB会議などにも使われているそうだ。
「手作業での議事録作成が職員の大きな負担になっているのは、どの自治体でも同じでしょう。当市では導入した結果、明らかに業務量の軽減につながったという声が届いています。こうしたツールは導入することがゴールではなく、職員に使って効果を実感してもらうことが大切。宝の持ち腐れにならないように、今後もより多くの職員に知ってもらう機会を増やし、さらなる効果につなげていく計画です」。
福島県でのチャレンジ
複数自治体間で効果を波及させる県内での共同調達に挑戦する。
福島県内の市町村では、スケールメリットを見込んで、同ツールの共同調達を計画している。中でも本宮市が先導し、自治体同士で声をかけ合いながら、一体となってその取り組みを進めているのだという。なぜ共同調達という手法を選択したのか、経緯を聞いた。
計画した自治体の声 福島県本宮市(もとみやし)
共通の課題を抱える自治体に向けて、ツールの横展開を目指す。
財務部 財政課
デジタル推進係
係長 石井 雄介(いしい ゆうすけ)さん
多くの時間を割かねばならない議事録作成業務に、課題を感じていた本宮市。同ツールの導入において、ボトムアップ式の共同調達に取り組むことで、導入コストの削減をねらっているのだという。
現場職員から要望の多かった議事録作成業務の効率化。
従来、ICレコーダーを聞きながら、手作業で文字起こしを行っていた同市。その作業には、会議の4倍ほどの時間がかかり、時間外労働が多く発生していたという。そこで、デジタル推進係の石井さんは動きはじめた。「総務省の自治体DX推進計画を踏まえ、当市でも業務の棚卸しに着手しました。現場へヒアリングを行ってみると、“議事録作成業務をどうにか効率化できないか”という声が多く集まったのです」。
そうした中で、ジチタイワークスで同ツールの記事を発見。「導入済みの他自治体から紹介を受けて契約すると、端末を1台無料でもらえるキャンペーンが魅力的でした。そこで情報収集も兼ねて、他自治体に連絡を取り紹介してもらい、トライアルを開始することになりました」。まずは議事録作成が必須の会議を担当する2つの課で実証を行い、ツールの使用感を確認することに。試してみると、文字認識精度が高く、作業の時短につながる手応えを感じ、令和7年度からの本導入を決断したのだという。
決め手の一つは、ツールに生成AIが搭載されていることだった。「AIの活用は今後重要になります。このツールであれば、議事録作成の効率化と同時に、その一歩を踏み出すきっかけになるのではと考えたのです。いきなり、AIツールを導入しても、活用は一部の職員にとどまってしまう。議事録の要約のために生成AI機能を活用するなど、触れる機会をつくりたかったのです」。
県のDX担当にも協力を仰ぎ共同調達の旗振り役となる。
導入にあたっては、県内の他自治体との共同調達を計画しているという。その経緯について石井さんはこう振り返る。「共同調達では、導入コスト削減などのスケールメリットが期待できます。議事録作成は自治体で共通の課題のため、横展開が有用ではないかと考えたのです。そこで、同社へ共同調達の相談をもちかけて了承を得た上で、他自治体に声をかけることにしました」。
まずは、福島県のデジタル変革課に周知の協力を依頼し、参加希望の自治体を募集。石井さんからも日頃、連携している自治体へ地道に声をかけると、“ちょうど課題に感じており、いい機会だ”と好反応が寄せられた。また、すでに同ツールを導入済みの自治体も存在していたことから、それらの自治体も、共同調達の枠組みに入れるように調整したという。「人手不足の解決手段としてDXがある一方、ツール導入には費用面が障壁となります。そこで共同調達で、連携しながら横展開をすることは、Win-Winの関係だと考えました」。
“デジタルで進化するまち、笑顔ひろがる暮らし”との目標に向けて、積極的にDXを進める同市。「現場に寄り添う推進を大切にしています。ツールを浸透させるためには、利便性を自ら実感することが大事。当課はそのきっかけを提供する役割があると思うので、今後も周知を行い、さらなる業務の効率化につなげていきたいです」と展望を語ってくれた。
共同調達に参加予定!すでに活用中の自治体に聞いた2つの質問
Q1 どういった場面で活用が進んでいますか?
Q2 使ってみてどのような効果を感じていますか?
檜枝岐村(ひのえまたむら)
総務課
主査 星 満(ほし みつる)さん
A1. 主に、庁内で開催される会議で活用しています。規模は大小問わず、幅広い活用場面があると感じています。
A2. 作業が大幅に省力化されました。また、すぐに作業できない場合も録音が残るので、都合のよいときに作成でき助かります。
会津美里町(あいづみさとまち)
政策財政課 デジログ推進室
主任主査 秋山 拓也(あきやま たくや)さん
A1. 各種会議での活用がメインですが、人事部門の個別面談などにも使っていて、活用場面の広さは想定以上です。
A2. 議事録作成の効率化はもちろん、職員から使い方に関する問い合わせが少なく、運用側の業務負担も軽減できました。
伊達市(だてし)
総務部 デジタル変革課
主任主事 野田 歩(のだ あゆむ)さん
A1. 各部署の会議や打ち合わせで活用しています。庁外で開催される住民説明会でも使用でき、場所を問わない点が便利です。
A2. トライアル時の効果測定では、約40%の時間削減につながりました。持ち運びやすい手軽さが好評で、活用が進んでいます。
南相馬市(みなみそうまし)
復興企画部 デジタル推進課
主査 白井 宏和(しらい ひろかず)さん
A1. 記者会見の文字起こしに活用しています。生成AI機能も併せて活用して、修正作業も軽く体裁を整える程度で済みます。
A2. 40分の記者会見の文字起こしに、従来は半日程度かけていましたが、導入後は約1時間で終わるようになりました。
浪江町(なみえまち)
企画財政課 情報統計係
左:主査 関口 惇也(せきぐち じゅんや)さん
右:副主査 吉田 峻規(よしだ としき)さん
A1. 対面会議はもちろん、WEB会議でも活用中です。そのほかにも、要約機能を用いて、とりとめのない打ち合わせ内容を整理するなど、意見の擦り合わせに役立てています。
A2. 議事録の正確性の担保と、業務負担軽減を両立させることができたと感じます。専用編集画面では、ピンポイントで音声の聞き直しが可能なため、修正作業がラクになりました。
共同調達を推進しています
福島県
企画調整部 デジタル変革課
総括主幹 兼 副課長
本宮 幸治(ほんぐう こうじ)さん
市町村同士の連携効果に期待
共同調達は、市町村にとって大きなメリットがあります。また、担当者同士の関係構築や連携強化にも期待しており、県として支援していきたいと考えているところです。今後も県全体のDXの意識醸成、底上げを図っていきます。
沖縄県内の情報共有
導入自治体の声 沖縄県竹富町(たけとみちょう)
ツールの導入で作業時間が短縮でき、他自治体にも情報を共有。
DX課 主事
久保田 悠人(くぼた ゆうと)さん
会議回数がそれほど多くはない小規模自治体でも、議事録作成は負担となっている。竹富町では、同ツールを導入して、大幅な作業時間の短縮につなげているそうだ。さらに、他自治体との交流の中で、その経験を共有したのだという。
導入後は利便性の高さから町長の住民対話でも活用。
手作業で行う議事録作成業務に課題感を覚えていた同町。業務の負担を軽減すべく、文字起こしができるアプリやWEBブラウザの機能などを試したが、実用に耐え得るものではなかったのだという。「大小問わず様々な会議で、議事録作成を行っていました。しかし、かなり手間がかかる作業のため、どうにかする方法がないか探していたところ、同ツールにたどり着いたのです」と、経緯を語る久保田さん。まずは約半年間の無料トライアルを実施して、使い心地や精度を試した後、本導入へ進むことになったのだという。
「専用端末にSIMが内蔵されており、リアルタイムで会議内容の文字起こしができることに驚きました。また、近隣自治体の職員から、別ツールの価格を聞く機会がありました。比較してみると同等の機能でありながら、安価だった点が導入の決め手となったのです」。導入後、庁内の職員からは喜びの声が上がっており、これまでは数日かかっていた議事録作成業務が、半日程度で済むようになったそうだ。
また、活用の幅は庁内全体に広がっている。「当町では、各地域にある公民館に定期的に出向き、町長が直接町民の意見や話を聞く場を設けています。このツールは、Wi-Fiなどのインターネット環境がない場所でも使えるため、公民館でも活用できます。その場で住民から出る意見などを記録するため、役立っていると担当課から聞きました」。ほかにも、“メモを取っておく”という感覚で、気軽に利用するケースも増え、後から聞き返せる利便性を感じているという。
費用対効果がしっかり出る導入経験が他自治体の参考に。
同町では、県内の市町村とコミュニケーションが取れるチャットを利用しており、他自治体と情報交換をする機会がある。その中で、今回のツール導入事例についても情報共有を行ったという。
「議事録作成は、どの自治体でも発生する業務のため、同様の課題を抱える自治体は多いようです。当町で導入した後に、“どんなツールを活用しているのか知りたい”という質問を受けました。そこで、導入効果や利用価格などの情報を共有したところ、その後、同じツールの導入を決めた自治体もあったようです。無料でトライアルができる上に、スモールスタートで試せるのは、導入を進めやすいポイントになると思います」。
限られたリソースで、行政サービスを維持するには業務の効率化が欠かせない。そうした状況において、「効率化できる業務は手間を省き、人が対応すべき業務に時間を割けるように、引き続き施策を考えていきたいです」と今後の意気込みを語ってくれた。
他自治体はどうしている?よくある質問に担当者が回答します。
導入を検討したい自治体にとっては、コストや機能など、気になる点が多いだろう。ここでは、寄せられることの多い質問をピックアップし、企業の担当者に答えてもらった。
時空テクノロジーズ
都築 真夕美(つづき まゆみ)さん
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