ジチタイワークス

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の早期受診が、超高齢社会におけるフレイル予防に。

フレイルとは、“加齢とともに生活機能を支える体力や気力が低下した状態であり、要介護状態に至る前段階”だといわれている。超高齢社会を迎え、国、自治体にて様々な予防対策が行われているが、今回はフレイルにも関連の深いCOPD(慢性閉塞性肺疾患)に注目。フレイルとの関係性や、早期受診がもたらすメリットについて、呼吸器内科学を専門とする、日本大学名誉教授 橋本 修先生に話を聞いた。

[提供]アストラゼネカ株式会社
自治体でCOPD受診勧奨を始めるに当たって役立つ情報を、アストラゼネカのホームページで公開しています。
▶自治体によるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の受診勧奨の取り組み

※下記はジチタイワークスPICKS(2021年9月発行)から抜粋し、記事は取材時のものです。

日本大学名誉教授
橋本 修(はしもと しゅう)先生

プロフィール

1981年に日本大学大学院医学研究科を修了。日本大学医学部教授、日本呼吸器学会理事長、湘南医療大学保健医療学部学長補佐・教授等を歴任。現在、日本大学名誉教授、日比谷国際クリニックメディカルディレクター、一般社団法人 クリーンエア(JCAA)理事長。

健康寿命を延ばす上でフレイル予防は不可欠。

―現代の超高齢社会において、フレイル予防に積極的に取り組む自治体が増えていますね。

年を重ねると誰しも運動機能が衰えますし、疲れやすく家に閉じこもりがちになります。このように心と体の働きが弱くなった状態、要介護状態に至る前段階を「フレイル」と位置づけています。フレイルは、医療・介護保険等の社会保障費の増加、また、ケアに当たる人材も必要となります。社会的、経済的両面から見ても、フレイルに至らないようにすることが大切ですから、各自治体が積極的に予防促進を行っていると考えられます。

また、フレイルは“早期の適切な介入により、自立した健常な状態に戻ることができる”とされていますが、まずはフレイルに陥らないように生活機能の維持・向上を図ることが求められます。ただ寿命を長くするだけではなく、健康に楽しく過ごせる、つまり健康寿命を延ばすことが大切。こうした考えのもと、フレイル予防が注目されています。

無症状もしくは症状が乏しいCOPDの早期受診を促進。

―フレイルにはCOPDの影響もあるということですが、その原因や症状、フレイルとの関連性について教えてください。

COPD※(慢性閉塞性肺疾患)は、従来、肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれてきた病気の総称です。病気を引き起こす主な要因は喫煙です。“肺の生活習慣病”ともいわれ、罹患すると肺胞が破壊され、空気の通り道である気道が狭くなることで、肺機能が低下します。

大きな特徴として初期は無症状、もしくは症状が乏しいため自覚しづらく、なかなか受診につながらないという点が挙げられます。そのため、有病推定患者数は530万人であるのに対し、現在治療を受けている総患者数は22万人(図1)と、わずか4.2%に留まっています。

COPDは労作時の息切れ・せき・たんなどが主な症状で、悪化すると安静にしていても息切れを感じ、日常生活に大きな支障をきたします(図2)。COPDに起因する息切れにより、低活動(動かない、外出しないなど)、筋力や運動機能低下に陥ることでフレイルへの移行が加速します(図3)。COPD患者は、COPDを罹患しない65歳以上の高齢者に比べて、フレイルの合併頻度がとても高いといわれています。逆に、早期受診によってCOPDを早期発見・治療開始することが、フレイルを予防することにつながるのです。
※COPD=Chronic Obstructive Pulmonary Disease

 


※1 総患者数:調査日現在において、継続的に医療を受けている者(調査日には医療施設で受療していない者を含む)の数を次の算式により推計したものである。総患者数=入院患者数+初診外来患者数+(再来外来患者数×平均診療間隔×調整係数(6/7))
※2 厚生労働省HP 平成29年患者調査の概況:
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/index.html
※3 Fukuchi Y. et al.: Respirology. 9: 458-465, 2004
※4 厚生労働省HP 平成30年国民健康・栄養調査報告:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/h30-houkoku_00001.html

 

 

 

―他の病気に比べてCOPDの受診率が低い理由は何でしょう。

大きく2点あります。1点目は、初期は無症状であり、症状が出ても“明らかな症状”ではないという点です。せきやたんなどの症状は風邪と混同されがちですし、息切れは加齢が原因と自己判断して見過ごされることが多いのです。また、2点目は、これらの症状が気になっていても、何科に行けばいいのか、どこで受診できるのか分からず、先延ばしにしている方が多いという点です。

そんな方々のために、私ども「一般社団法人 クリーンエア(JCAA)」のホームページでは、自分でCOPDをチェックできる「肺の病気COPDセルフチェック」を用意し、呼吸器専門医の所属する最寄りの医療機関を簡単に検索できるようにしています。ぜひ利用して、いち早い検診につなげてほしいと思っています。

▼詳しくはこちらから

一般社団法人 クリーンエア(JCAA)

COPDセルフチェックと全国の身近な呼吸器専門医が検索できます
https://cleanair.or.jp/

 

COPDの早期受診における自治体の役割とメリット。

―今後、自治体の取り組みとして期待していることはありますか。

自治体には住民の健康情報が集約されており、様々な方法で直接本人に受診勧奨することが可能です。自治体から届く案内は信頼度が高く、皆さん安心して開封すると思います。

また、自治体の特定健康診査や肺がん検診にCOPD検診を取り入れることも有効ですが、予算や人員が潤沢な自治体ばかりではないと思います。そこで、現在、自治体で独自に行っている健康増進のためのイベント、また、自治体がすでに保有している住民への情報提供ツール(アプリ、SNSなど)を活用し、COPD受診率アップにつなげてほしいです。その際にまず使っていただきたいのが、COPDの可能性があるかどうかを手軽に調べられる「COPD-PS™」というスクリーニング質問票です(図8内画像)。症状などに関する質問数が5問で、簡単に自己採点できます。ぜひ試してほしいですね。

―COPDの受診率向上は、自治体にとってどのようなメリットがありますか。

平成25年度より開始された「健康日本21(第二次)」の中で、COPDはがん、循環器疾患、糖尿病とともに“発症予防と重症化予防”が必要な疾患に挙げられました。その上、COPDは糖尿病や心疾患を併発する方も多いので、早期受診・治療が健康寿命を長くするために不可欠です。

現在の医学では根本的に治すことはできませんが、早期に診断を受けて治療を開始すれば、肺機能の低下を遅らせ、健康な人と変わらない生活を続けることもできます。そうなれば医療・介護保険等の社会保障費への影響も抑えられますし、健康であることは、一緒に暮らす家族の介護の軽減にもつながる。結果的に住民の幸福度を向上することができるわけです。ぜひ全国の自治体で、今できることからCOPD受診勧奨に取り組んでいただけたらと思います(図8)。

 


従来の啓発活動から一歩踏み込む、自治体が行うCOPD受診勧奨とは。

令和2年度に「アストラゼネカ」および「キャンサースキャン」と連携・協力し、官民連携事業としてCOPDの受診勧奨を行った、長浜市と広陵町。これまでにCOPDの認知率向上に取り組んできたものの、その効果は見えにくかったという。今回の受診勧奨事業で見えた具体的方法と成果、今後の取り組みについて聞いた。

滋賀県 長浜市
左:健康福祉部 健康企画課 大谷 周平(おおたに しゅうへい)さん
右:市民生活部 保険年金課 久保田 逸子(くぼた いつこ)さん

奈良県 広陵町 福祉部 けんこう推進課
芝 宏美(しば ひろみ)さん
 

Q:これまでにCOPDの啓発に関する取り組みを行っていましたか。

長浜市▶当市は喫煙との関連が指摘されるCOPDの男性の標準化死亡比(EBSMR※)が、全国平均と比べて高いという背景がありました。そこで平成29年度から、国民健康保険(以下、国保)被保険者の健康づくり・生活習慣病予防支援として、前年度の特定健康診査(以下、特定健診)時に喫煙歴がある方へ、COPD啓発等のリーフレットを毎年1回送付しています。

※EBSMR=Empirical Bayes estimate of Standardized Mortality Ratio

広陵町▶平成26年度に、奈良県が実施した「たばこ対策(COPD)モデル事業」、「健康長寿を延長する取組推進モデル事業(たばこ対策分野)」に参画したことをきっかけに、当町におけるたばこ対策の推進を始めました。特定健診や肺がん検診受診者において、問診票で“現在喫煙している”と回答した方に対し、個別の禁煙指導や、スパイロメトリー(呼吸機能)検査を実施。「息を吐き出す力が弱くなっていますね」「今の肺の状態はこうですよ」など、丁寧に説明をすることで、対象者の反応には手応えを感じていました。しかしその後、実際に病院を受診したかどうか追跡の電話をしてみても、事業全体の効果までは見えなかったという課題がありました。
 

 

Q:今回、COPDの受診勧奨に取り組んだきっかけとは。

長浜市▶これまで私たちが行っていた、単にリーフレットを送るだけの啓発では、結果的にどれだけの人の禁煙意識が高まったのか、実際に医療機関を受診して禁煙につながったのかなど、状況を把握することができずにいました。今回、官民連携事業としてレセプトデータ(診療報酬明細書)を分析し、COPDハイリスク者、COPDの治療中断者へ受診勧奨ができること、さらに、実際に受診したかどうかまで評価できるということで、当市にとっても必要な事業だと考え、事業推進を決めました(図4)。

広陵町▶前述の通り、これまでの対面式支援には課題を感じていました。そもそも、特定健診に来た方へは支援ができますが、来ていない方への支援はできません。

それが、これまでの対面式支援では喫煙者本人にしか伝えられなかったことを、今回の事業のようにハガキによる受診勧奨であれば、家族や周囲の人へも情報を届けることができるというわけです。さらに、これまで保健師たちが一生懸命に個別指導していたことの評価を見える化できることは、保健師にとってのモチベーションにもつながると思いました。評価ができることで、“自分たちが今までやってきたことや、これから進むべき道も間違っていない”という確信が欲しいなと思い、この事業の推進を決めました。
 

<長浜市>
対象者:2020年7月1日時点において長浜市国民健康保険の資格を保有し、医療機関受診勧奨通知送付時点も資格を保有し、2021年3月31日時点で40歳以上74歳以下の者のうち、
●COPDハイリスク者:2019年度の特定健診受診者のうち、問診票で「喫煙習慣あり」と回答した者、かつ本事業で使用するレセプトデータの期間(2020年1月~6月)において、COPDの診療歴がなく、通知送付が可能と長浜市が判断した者 733人
●治療中断者:COPD治療歴がある患者のうち、2020年1月~6月の期間において、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫の診療歴およびLAMA/LABA※1の処方歴がなく、通知送付が可能と長浜市が判断した者 188人
受診勧奨ハガキ送付:2020年10月16日 ◯アンケート送付:2020年11月16日

※1 LAMA:長時間作用性抗コリン薬/LABA:長時間作用性β₂刺激薬

<広陵町>
対象者:2020年10月1日時点において広陵町国民健康保険の資格を保有し、医療機関受診勧奨通知送付時点も資格を保有し、2021年3月31日時点で40歳以上74歳以下の者のうち、
●COPDハイリスク者:2019年度の特定健診受診者のうち、問診票で「喫煙習慣あり」と回答し、通知発送時点で通知送付が可能と広陵町が判断した者 202人
受診勧奨ハガキ送付:2020年10月16日 ◯アンケート送付:2020年11月4日

※医療機関受診者は、長浜市、広陵町ともに、医療機関でスパイロメトリー検査を受診した、またはCOPD(慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎)の診断を受けた者とした。
※レセプトデータ等のヘルスデータの分析はキャンサースキャンにて実施し、アストラゼネカはレセプトデータ等のヘルスデータの取り扱いには一切関与していない。

 

 

Q:受診勧奨を進める上で工夫した点を教えてください。

長浜市▶受診勧奨の対象者としたのは、これまでの事業でリーフレットを送付していたのと同様のCOPDハイリスク者と、新たに追加したCOPD治療中断者です。これまでの取り組みから、“第三者(家族など)である周囲の勧めが本人を動かす”という結果を把握していたので、今回の受診勧奨ハガキには、「家族やかかりつけ医とご相談ください」という一文を表面に記載(図5)。また、送られてきた理由がすぐ分かるよう、中面には、対象者に合わせて「タバコを吸う方・かつて吸っていた方は」や「COPDの治療を中断している方は」といった文言が一番に目に入るよう配慮しました。

今はCOPDに該当するような症状がなくても、将来健康を害するリスクがあることも記載し、イラストを効果的に配置。治療中断者向けには、さらに踏み込んで、“COPDの方はそうでない方と比べて、肺炎などの合併リスクが数倍高い”といった情報を入れるなどの注意喚起をしました。気になったらすぐに行動できるよう、医師会の協力を得て、市内の医療機関一覧も掲載。このハガキだけで、COPDへの気づきから医療機関への受診行動までの一連の流れがスムーズに完結できるように意識して製作しました。

また、庁内の体制として、国保を担当するのは保険年金課ですが、専門知識不足を補うため、普段から市民の健康状態を把握し、喫煙対策に取り組む保健師にも入ってもらいました。部署を横断して今回の事業に取り組みました。

広陵町▶当町として初めて官民連携で取り組む事業だったので、当初緊張感はありました。しかし、私たちがこれまで進めてきた、たばこ対策や事業について、企業側に丁寧にヒアリングをしてもらえたことで、安心して一緒に取り組めました。

特に、受診勧奨ハガキ送付後に送ったアンケートの作成では、役所にありがちな“あれもこれも聞きたい”という欲張りな内容ではなく、今回聞きたいところだけに焦点を絞ることを企業側から提案していただきました。結果的に対象者にとっても回答しやすい質問量と内容になったと思いますし、アンケートの返信率にも影響していると思います。

アンケートはA4サイズが入る封書で送りましたが、表書きには、いかにも役所から、といったキャラクターを入れたりしてごちゃごちゃさせず、シンプルに仕上げて、手に取って開封してもらいやすくすることを意識しました。
 

●第三者への周知呼びかけ
受診への行動変容には、第三者の勧めが必要不可欠。重要なお知らせであることとともに、長浜市は「家族やかかりつけ医とご相談ください」、広陵町は「身近な方やご友人とご相談ください」と表記した。

●イメージしやすいイラスト
COPDを放置すると要介護・寝たきりにつながる将来リスクがあることを、症状や活動状態の経過とともに経時的に分かりやすくイラストで掲載し、受診の行動変容につなげた。

 

 

Q:初めて取り組んでみて課題に感じたことはありますか。

長浜市▶ハガキを送付後、COPD治療中断者の方から「COPDの治療を受けたことがない」「なぜこのハガキが届いたのか分からない」という問い合わせがありました。「これまでに、慢性気管支炎で病院にかかられたことはありませんか?」と掘り下げて尋ねると、「そういえば、かかったことがあったかな」と思い出されることも。これまで市から送付していたパンフレットなどは見られていなかったかもしれないし、COPDという疾患自体の認知率の低さも痛感しました。

また、医療機関からは、「患者が受診勧奨のハガキを持ってきたが、どういう検査をしたらいいのか」という問い合わせもありました。医療機関の負担を最小限にし、円滑に受診対応してもらえるよう、目的・内容・対応方法について事前に連携することが、非常に大切だと思っています。

広陵町▶特に大きな課題はなく、あえて挙げるとすれば、官民連携事業としてキャンサースキャン社に国保データベース情報を提供することに対して、庁内で議論がなされました。この事業を推進してCOPDの早期受診・治療を促すことは、結果的に“町民へ還元でき、評価が得られる”ということで、承認が下り、取り組むことができました。
 

 

Q:COPD受診勧奨の結果、前年度の同時期と比較して受診率が増えたそうですね。

長浜市▶レセプトデータの分析によると、COPDハイリスク者の受診率は、令和元年度の同時期と比較して、約1.6倍に増えました(図6)。COPDの認知がなかなか高まらない中で、対象者を絞り、将来リスクを訴えかける受診勧奨をしたのは効果的だったと考えています。今後ハガキの記載内容や、同時期の広報によるCOPDの市民周知等(事業の実施方法)をもっと工夫して進めていくと、おのずと受診率が上がっていくのではないかと期待しています。

広陵町▶今まで取り組んできた対面式とは違い、一方的にハガキを送る形だったので、どういった反応があるのか楽しみでした。その反面、コロナ禍ということもあり、受診控えがあるのではと、心配もしていました。

しかし、結果的には、令和元年度の同時期と比較して、COPDハイリスク者の受診率は約1.3倍に増加。このような状況下でも医療機関を受診した方が想像よりも多く、今回の受診勧奨の効果を実感しました。“伝わるメッセージを送れば、人は動いてくれる”ということが分かりましたね。
 

※レセプトデータにて、疾患啓発・受診勧奨通知を送付した後のCOPDに関する医療機関受診の人数(長浜市、広陵町ともに、医療機関でスパイロメトリー検査を受診した、またはCOPD[慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、慢性気管支炎]の診断を受けた者とした)を集計し、受診率を算出した。前年度の同時期における同定義の対象者の受診率と比較し、事業の実施効果を検証した。

 

 

Q:アンケート結果から読み取れたことは。

長浜市▶受診勧奨ハガキ送付後にお送りしたアンケートについては、ハイリスク者で52.0%(381人)の返信率でした。アンケートを返信いただいた方のうち、74.1%(277人)が受診勧奨ハガキを開封し、またそのうち58.9%(163人)の方が、すでに受診済または今後受診する予定と回答(図7)。ハガキ自体の内容の理解度も高く、良好な結果だったと考えています。

ハガキの開封率には行政から送られてきたという安心感も影響したと思いますし、中面の内容もハイリスク者・治療中断者それぞれの対象者に合った工夫をしたことで、行動変容につなげられたと思います。

受診には第三者の後押しが影響すると考えていましたので、ハガキ表面でもそのような表現を工夫し、アンケートで「お知らせを周囲の方に見せたり話したりしたか」と質問。回答してくださったハイリスク者278人のうち36%(100人)、治療中断者73人のうち47.9%(35人)が、「周囲に見せたり話したりした」という回答でした。ハガキを周囲に見せた人の方が、受診意向が高い傾向であること、周囲から受診を勧められたことで受診意欲がプラスに働くことが分かりました。本人だけでなく、周囲の人にも通知を見てもらうことを前提にしたこの事業は、一定の効果が見込めるものだと実感しています。

広陵町▶ハイリスク者のアンケートの返信率が56.9%(115人)と、半数を超えるとは想像していなかったので驚きました。そのうちハガキの開封率は69.9%(79人)と、ダイレクトメッセージによって、対象者の心に届くのはもちろんのこと、“医療機関を受診する”という行動変容にまでつながることが分かりましたね。「受診した」「これから受診するつもり」と回答した方は39.5%(30人)でした。理由として、「要介護・寝たきりなど、将来の不安を感じた」という回答が多く、フレイルの予防という点が行動変容を促すメッセージになっていたと思います。

また、これまでの個別指導では届かなかった家族など周囲の方へメッセージが届けられたのもよかったです。実際にハガキを受け取った家族からの問い合わせも多くありました。今回だけでは行動変容につながらなかったとしても、対象者のタイミングによって心に届く時期があると思うので、今後も定期的にメッセージを発信していきたいですね。

 

※受診勧奨ハガキ送付者に、COPDに関する認識や受診意向が生まれた理由等を確認するため、アンケート調査を実施した。(長浜市2020年11月16日送付、広陵町2020年11月4日送付)。

 

 

Q:自治体主導の受診勧奨をする上で今すぐできること、課題になることは。

長浜市▶行政が持つ国保データから、年齢や喫煙の有無によって対象者を抽出することは可能だと思います。その場合、社会保険の被保険者は対象外になるため、広く勧奨したい場合には市の健康管理システム等から、年齢、性別といった条件をもとに、COPDの有病率が上がるといわれる対象を抽出するなどの工夫が必要です。

特に、郵送費などのコストと効果を考えると、より罹患割合が高い“男性”に絞るなど、目的と方法を考えて対象者を選定することが必要になると思います。ただ、治療中断者の抽出や、実際に受診したかどうかのレセプトデータの分析は、たとえ専門知識を持った職員がいたとしても、自治体だけで行うことは難しいと感じています。

COPDの認知率向上や受診勧奨の結果公表などは、ハガキ・封書・広報誌・インターネットなど、対象者や目的に合わせてうまく活用できると思いますので、今回の経験を踏まえながら実践していきたいです(図8)。

広陵町▶受診勧奨ハガキやアンケートの作成時に、私たちは“あれも伝えたい、これも聞きたい”と、ついつい文章を盛り込んでしまいがちでした。今回、分かりやすいイラストで視覚的にも理解しやすいハガキの内容にでき、焦点を絞った質問で回答しやすいアンケートにできたのは、連携企業のアドバイスがあってこそ。自治体だけで一からつくっていくのは難しいと感じました。

例えば今回ハガキで使用した“COPDの進行が将来要介護・寝たきりにつながるイメージ”のイラストが、フリー素材として自由に活用できるといいなと思います。可能であれば、健康教室や乳幼児健診など、様々な世代の目に触れる場所に、イラストを使ったCOPD啓発のポスターを掲示したり、リーフレットなどをお渡しする機会を設けたりと、広く活用していきたいです。

今回やってみたからこそ分かった課題や、これから町全体として取り組む方向が見えてきました。COPDの受診率向上を課題としている自治体には、「まずはやってみて!」とお伝えしたいです。

 

 

今回の結果はこちらから確認できます

<長浜市>
https://www.city.nagahama.lg.jp/0000009285.html
<広陵町>
https://www.town.koryo.nara.jp/contents_detail.php?co=kak&frmId=4197


COPDの受診勧奨に使える資料がホームページからダウンロードできます!

自治体でCOPD受診勧奨を始めるに当たって役立つ情報を、アストラゼネカのホームページで公開しています。3つのフェーズの実例を踏まえた紹介や、受診勧奨時に使用するリーフレット・ポスター案のダウンロードが可能です。

▶自治体によるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の受診勧奨の取り組み
https://www.astrazeneca.co.jp/azkk/Respiratory/local_government.html

お問い合わせ

株式会社キャンサースキャン

担当:北村
TEL:03-6420-3390
E-mail:info@cancerscan.jp
住所:〒141-0031 東京都品川区西五反田1-3-8 五反田PLACE 2F

提供/アストラゼネカ株式会社

メールで問い合わせる

記事タイトル
自治体名
部署・役職名
お名前
電話番号
メールアドレス
ご相談内容

ご入力いただきました個人情報は、ジチタイワークス事務局がお預かりし、サービス提供元企業へ共有いたします。
ジチタイワークス事務局は、プライバシー・ポリシーに則り、個人情報を利用いたします。

上記に同意しました

このページをシェアする
  1. TOP
  2. COPD(慢性閉塞性肺疾患)の早期受診が、超高齢社会におけるフレイル予防に。