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今求められている災害関連情報伝達のあり方とは?

近年、自然災害が激甚化・頻発化している。例えば、令和元年の房総半島台風による大雨災害、熊本県や鹿児島県を中心とする令和2年7月豪雨、令和3年8月の前線に伴う大雨災害、令和4年6月の石川県能登地方における地震など、日本を襲う災害は枚挙にいとまがない。そんな状況下で住民の生命・財産を守り、社会の重要な機能を維持させるためには、災害対策を加速化・深化させる必要がある。そこで今回は、災害関連情報伝達のあり方について、事例を挙げながら考えていく。

3割の自治体が、災害時の情報発信に課題を感じている

災害対策の一部として、地域住民に避難勧告などの災害関連情報を伝える責務が自治体にはあります。令和2年3月に発表された、総務省消防庁防災情報室「災害情報伝達手段の整備等に関する手引き」によると、自治体が住民へ伝えるべき災害情報(特に避難のきっかけとなる情報)として、以下3つが挙げられています。

①気象庁等からの情報として、気象・災害に関する情報
②内閣官房からの情報として、国民保護に関する情報
③自治体からの情報として、避難勧告等に関する情報

災害関連情報の発信にひもづけて、ここからはある調査の結果を見ていきましょう。

AI防災・危機管理ソリューション「Spectee Pro(スペクティ プロ)」を提供する株式会社Specteeが、自治体で防災・災害対応に従事する約1000人に「災害発生時に直面する課題(複数回答可)」を尋ねたところ、以下の結果となりました。

1位「初動対応が迅速にできない」42.0%
2位「刻一刻と変化する状況を把握することが難しい」38.6%
3位「情報の正確性を確認することが難しい」37.5%
4位「住民へいかに迅速に情報を伝達するか」36.4%
5位「適切なタイミングで避難指示を発出することが難しい」29.5%

6位「人員不足」22.9%
7位「関係各所との連携不足」22.2% 


4位・5位の回答を見ると、現場の自治体職員が災害時の情報発信にも課題を感じていることが分かります。

それでは、こういった課題を改善するため、自治体と民間企業はどのように連携しているのでしょうか。今回は熊本県八代市の事例を見ていきます。

度重なる大災害を経験し、情報伝達手段の必要性を痛感した

熊本県中部に位置する八代市は、豊かな自然が魅力的ですが、同時に多くのリスクも抱えています。

危機管理監の中武さんによると、八代市は、日本三大急流の1つである球磨川の河口にあり、第一級活断層の日奈久断層が斜めに走り、約1260カ所の土砂災害特別警戒区域が広い地域に点在しているとのこと。実際に、山間部の林道では土砂災害が毎年のように発生し、道路が寸断された場合に孤立してしまう地域もあります。さらに、球磨川以外の第二級河川も多く、氾濫リスクを有するものもある上、海に近い平野部では高潮なども心配されてきました。

こうした災害リスクに対し、同市は様々な取り組みを進めてきたものの、大きな課題が残っていました。同市は平成17年に2町3村が合併して生まれたため、防災の仕組みが統一されていなかったのです

そこで防災システムを見直していたところ、平成28年に熊本地震が発生しました。同市では最大震度6弱を記録し、本庁舎は使用不可能な状態に。本庁業務を14施設に分散し、制約がある中でも業務を継続していましたが、次なる大災害が同市を襲いました。令和2年7月豪雨です。

7月3日の深夜から雨が激しくなり、球磨川は急激に増水。翌日の午前4時頃、市内の坂本地区には避難指示が出されました。追い打ちをかけるように坂本地区の支所が水没し、防災行政無線は使用不能になってしまいます。固定電話の回線も使えなくなり、同区との連絡手段は職員の携帯電話のみに。当時の災害情報伝達手段は防災行政無線とメールでしたが、坂本地区では無線もインターネットも使えないため、住民へ情報を届けられなくなってしまいました。

この豪雨災害の経験から、強靭で多様な情報伝達手段を確保する必要性を同市は痛感したといいます

住民が自分に合った手段を選べるよう、選択肢を多く準備する

そこで同市が導入したシステムが、NTTビジネスソリューションズ株式会社の提供する「@InfoCanalⓇ」です。同システムは、携帯電話やWi-FiなどのIP通信網を利用した防災情報配信サービス。携帯電話網なら場所を選ばず情報配信できる上、民間の通信網を利用しているため無線の免許や電波の申請手続きなどが不要という点が、主な決め手になりました。

また、今までは、防災行政無線、メール、ホームページと、それぞれ別の作業が必要でした。防災行政無線で放送を流す場合には、肉声で録音・配信しますが、時間も手間もかかってしまいます。合併後に複数の防災行政無線を統合したため、相性の悪い地域もあり、住民から「音声が聞き取りづらい」という意見も上がっていました。これらの課題を改善できるシステムとして、@InfoCanalⓇに期待が集まったのです。

同システムは、肉声ではなくテキストデータを送信し、受信側で音声に変換する方式を採用しています。そのため送信データが格段に軽く、あらゆる端末へ一斉に配信できるとともに、インターネット環境があれば職員はどこからでも情報配信が可能です。また、スマホ利用者にはアプリ、携帯利用者にはメール、携帯を持っていない人には固定電話や戸別受信機など、配信先も豊富なため、どんな人でも情報を受け取れる点がメリットなのだといいます。

中武さんは「住民が自分に合った手段を選べる点が優れていると思います」と語ります。さらに、危機管理課の小林さんは「地域によって、適切な情報発信方法は違うはずです。だからこそ住民目線で考えて、多くの選択肢から住民が適切なものを選べるようにしておくことが大事だと思います」と述べています。

自然災害大国の日本において、災害情報伝達の強化は必須である

国土交通省によると、日本列島には未確認のものも含めて多くの活断層が分布しているため、全国どこでも地震発生の可能性があります。また、地球温暖化の進行に伴い、大気の気温が上昇しています。これにより、大気中に含まれる水蒸気量が増え、降雨量が1〜3割程度も増加することで、豪雨が高頻度化し、甚大な水害が発生するといった影響も考えられています。

自然災害による被害額が全世界の被害総額の2割以上を占めるとされる上、今後も被害が予測される日本において、災害情報伝達の強化は喫緊の課題です。しかし、対策は自治体だけで完結できるものではないため、官民連携のより一層の促進が求められるのではないでしょうか

 


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